ひこうきぐもの軌跡

家で、良く晴れた日に聞こえる筈のない音が聞こえてくることがあります。例えば電車の音。どうやら風は振動を運ぶことが出来るらしいのです。なんと。そんなものまで運ぶことができるのか!それにしても、その音のなんと美しいことか。風に乗るために輪郭だけになった音は、信じられない程控えめなのに確信的で、すっと心に深く浸透する。ぼくたちはその透過性に驚く。けれど、その振動は虹に似ていて切ないのです。そこにあるとき、確かに存在しているのに、あまりに寿命が短いので、思わず夢になってしまうのです。