ペンキ塗り

きょうは萎れた気分で最寄り駅に着く。ついてない日には、知らない小道を通ってみる。見慣れたもののなかに新しい場所を発見するとき、小学生に戻れたような気持ちになるのです。あの頃は、時間はいくら無駄遣いしてもひたひたの水の如く溢れていたし、嘘をついてもその嘘は風船のように軽くて、やがてどうでもいいものになってくれた。そして両親はまだスーパーマンのように無敵な存在で、毎日安心して眠っていた。

今、ぼくは大人で風やかなしみに色はない。だから新しい道を歩いては、ペンキ塗りのように幸福に彩色を施している。両親は無敵ではなくなったけれど、相も変わらずぼくを愛してくれている。